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終戦から10年を経た昭和33年の冬。日本には特別に売春を許された地区が幾つも存在していた。 その特別地域は警察の地図に赤い線で記されていた事から、「赤線」と呼ばれ、人々の欲望と侮蔑を一手に引き受けていた。 主人公はそんな赤線のうち一つである玉柳に足を踏み入れた少年、如月真之。 真之は戦後の混乱期、幼少の頃生活の為に娼婦に身をやつした母を追って赤線街・玉柳に入った。 国会での売春防止法制定を受け、赤線街はあと数カ月で失われる。手がかりを失う前にと玉柳を訪れるが、母の手がかりは無く途方に暮れる。 疲れ果て倒れる真之。そんな彼を介抱してくれたのは、不思議な落ち着きをもった空崎静枝だった。 彼女は玉柳の赤線宿「薫屋」の娼婦。静枝はこの街で母が見つかるまで真之を保護してくれる事となった。 赤線街での日々繰り返される生活と人情と情事。子供としての無力さと恋を覚え、成長をする真之。いつしか少年の小さかった手は、大事な者を守れるほどに成長して行く。 そして、真之は母と再会する時、何を思うのか? 彼の手は、いったい何を、誰を守るのか? 赤線の灯が消える、昭和33年の春―― 運命の日は静かに迫っていた――
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