七夕の季節……。ひまわりの園で誓った幼い少女たちとの約束―― 「……あれ? こんなところに神社なんてあったかな?」 ビジネス街にひっそりとたたずむ、古ぼけた鳥居。興味本位でくぐったその向こうには…… 不思議と落ち着く小さな境内に、まばゆい太陽の花、ひまわりが咲いていた。 どこかにあると云われるひまわりの園。それを見たのはいつの頃だったろうか――。 ここは碧島(あおしま)という、近年に都市開発された大型リゾート島。生い茂る碧色の木々。蒼々と広がる夏の空にエメラルドグリーンの海。 そんな賑やかな街に住んでいる俺、天ヶ見明斗(あまがみ あきと) は、今日も進学校である碧日(あおひ)学園へと通っていた。 毎朝、ご飯を作ってくれる愛らしい親友の女の子や、一緒に登校している生徒会長の幼なじみ。 仲の良い悪友に、情報に飢えてる新聞部の少女、読書好きの後輩。 ――そこにはいつもの日常があった。 本日は晴天なり。穏やかな一日が今日も始まろうとしている……と、思いきや。 「逢いたかったよー、明斗!」 教室へ唐突にやってきたのは転校生。しかももちろん美少女。 彼女はいきなり俺の名前を叫ぶと、艶のある黒髪をなびかせながら抱きついてきたのだった――! なにが起こった!? 「ま、待て! この子はいったい誰――?」 そこには柔らかな女の子の感触と、僅かに薫るひまわりの匂い――。 ある意味、セオリー通りでちょっと憧れな展開に嬉しさを感じつつ、でもやっぱり事態は泥沼で。 俺に訝しげな視線を送るクラスメートたち。 ツンケン詰め寄る幼なじみに、泣いて逃げ出す親友の女の子。 ああ、俺はこれから起ころうとしている波乱の幕開けに目眩を覚え、教室の低い天井を仰ぐしかないのであった。
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