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―――ルゼンハイドの意志を護る、盾と剣となれ。 ふと、祖父がよく口にしていた言葉が脳裏を横切り、白昼夢から目を覚ます。 国は謝罪をした。 しかし、祖父が駆り出された任務の内容や、死亡の原因に関する情報は一切提供してくれなかった。 私、リトナ・ラインヴァスタは状況をよく把握できないまま、14にして天涯孤独になった。 崩れていった。 愛国心や伝統や仕来り――教わってきた価値観が、全て薄っぺらく感じるようになった。 ラインヴァスタ家は、代々ルゼンハイド王家のガーディアンとして仕えてきた。 遠い昔、隣国のヴァストアルカとルゼンハイドがアライアンス協定を結んだときの話だ。 友好の証として、ヴァストアルカの名家であるラインヴァスタ家がルゼンハイドの王族付きガーディアンとして任命された。 王とガーディアンの絆は、ルゼンハイドとヴァストアルカの絆。 そう教わった。 その絆はいまのいままで続いてきた。 時間だけが過ぎていった。 二人でも十分広かった家がさらに広く感じるようになった。 最初あった胸を抉られたような痛みも、いまはもうなくなり、気怠さだけが残った。 友人のフローラが頻繁に訪れるようになった。 腫れ物を見るような目で身の回りの世話をしてくれるようになった。 ルゼンハイド城で暮らさないか、と国王から誘いがあった。 断った。 一人でいたくないのに、一人でいたい。 もうすぐセルフィーネ姫が10歳の誕生日を迎える。 誕生を祝う式では、次期王となる意志をアライアンスに示す継承披露宴が行われる。 その式は次期ガーディアンの任命式でもあり、元の予定では私が彼女のガーディアンとなるはずだ。 元の予定では、私が継ぐはずだ。 それが伝統。 それが仕来り。 全てが焼ける夢を見た。 ルゼンハイドも。 アライアンスも。 全て。 全て、焼け崩れて、 残った灰に唾を吐きつけ、 踏み躙って、 跡形もなく蹴散らしてやったら、 ――少しは気が晴れるのだろうか? なんて、 下らないことをよく思うようになった。
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