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女神であるセリアによって、異世界召喚された千種琢馬。 「最強の救世主として異世界を救う無双パターンか!?」と妄想に心躍らせていたのも束の間。 勇者として召喚したのは日ごろから彼をイジメる少女・涼森咲里(エミリ)で、彼は「手違い」で召喚されただけだった! 琢馬たちは『住んでいた世界に帰る』という目的の下で、 巻き添えを食らって同じく異世界へと送られたセリアと、魔王を倒す冒険をする事となる。 イジメっ子少女のエミリとの冒険など断りたい一心だったが、この世界を一人で生き抜いていく事など到底不可能。 『本来自分は必要ないから、元の世界に帰してくれ!』とセリアに頼むも、 肝心の彼女は異世界に飛ばされた影響で能力が著しく弱体化しているので、それも不可能。 さらに悪い事に、セリアは最強装備・最強ステータスを誇るエミリにゴマをすり、 今ではストレス発散とばかりに、一緒になって琢馬をイジメてくるクズっぷりを見せてくる始末。 そんな彼の役割は、二人のパシリをはじめダンジョンの罠チェック要員、 敵モンスターを倒すための囮役など、損な役回りばかり。 しかも、ミスでもしようとしたら「使えないわね!」「それでも男ですかぁ?」など、 暴言を吐かれたり暴力を振るわれたりと、散々な日々を送っていた。 だが、実力ではとても彼女たちに反逆できるはずもなく、 鬱屈した感情を押し殺しながら、理不尽極まりない旅は続く。 ――ある日、いつものように罠チェック要員として、森の中のとある洞窟遺跡で、一人探索させられていた時の事。 琢馬は、偶然にも隠し部屋を発見。 そこから地下扉へと続く階段があり、辿り着いた先には、魔術工房を彷彿とさせる一室が存在していた。 古びた書物が雑多に捨てられ、壁には呪文だろうか、まるで憤怒と執念を感じさせる勢いで文字が書き殴られていた。 その他にも所々、消えかかっているが、「復讐」や「許さない」など物騒な言葉ばかりが並ぶ。 そして、そこにはボロ切れを纏った骸が横たわっており、骸の近くには一冊の魔導書が落ちていた。 こんな不気味な部屋など早く立ち去りたいと思った琢馬だったが、どうしても、魔導書の存在が気になってしまう。 興味本位で手に取って見てみると、どうやらこの骸は過去に偉大な魔術師だったそうだが、 何らかの理由で国を追われて、隠遁生活を送っていたらしい。 そして、復讐の念を抱きながら、遺跡に引きこもり、魔法の開発に勤しんでいたらしかった。 ページをめくっていくと、彼は驚くべき発見をする。 『闇の感情を持つ者よ。きっとこれは大いに役立つだろう』 『これを読んだ者に、我が禁呪を授けよう』 そこには彼が編み出した、『操心』、いわゆる他人を操る魔術が記述されていた。 「これさえあれば、もしかしたら……」「まさかな……」と、半信半疑。 しかし本当に操心の力を扱えれば、自分を散々いたぶってきたエミリとセリアへの復讐ができる。 確実に琢馬の心の中はドス黒い感情に満たされていき、彼は、件の書物を懐に忍ばせると、部屋を出ていく。 ――そして、この日を境に、暗黒の日常は陰惨淫猥極まりない邪悪な桃色の日々へと変貌するのだった。
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