「……眠れない」 浅倉あさくら 真司しんじは悩んでいた。 夜になっても、眠れない。 ベッドで横になって目を閉じても、起きたまま。 代わりに昼間、学校の中で眠くなったりするし、 日中はいつもぼんやりしているし…… そんな彼はある日、ちょっとした気まぐれで、 寝静まる夜の街へ出かけてしまうが―― 「ダメだよぉ、こんな時間に出歩いちゃ! 早く帰ってちゃんと寝なさい!」 ばったり遭遇したのは、クラスの担任の先生、萩野はぎの 宇美うみ。 心配してくれる宇美に、真司は悩みを相談する。 どうしても夜になると眠れなくなる――と。 「1日にいっぱい満足すればいいの。 そうすればきっと、ぐっすり寝れるはずっ」 教えてもらったものの、 具体的にどうすればいいのか分からない。 そもそも昼間はぼんやり過ごしている真司が、 満足するまで動けるのは夜のあいだだけで…… 「うーん……それなら先生が、 満足できるように協力してあげたい……けど……」 先生である宇美からすれば、 夜間の出歩きを認めるわけにはいかないはず。 それが分かったからこそ真司も大して期待せず、 また別の日に夜の街へ出かける。 そこで出会ったのは――いつもと違う格好をして、 別人のフリをした宇美先生だった。 「えっと……わ、私は荻野おぎの ミウ!」 先生(?)と教え子が過ごす、2人だけの特別な夜の日々。 寄り添って過ごしてくれるやさしい時間が、 少しずつ心に安らぎを与えてくれる――
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