これは、世界で一番ちっぽけな国の話。 首都圏の片隅にある街、猫庭の一角に建つ城のようなお屋敷。 重厚な塀に囲まれたそこが、彼女が治める小さな王国だった。 王国の主である彼女を含めて、国民はたったの三人。 まぎれもなく日本であるのに、戯れに存在する王国。 そこでは僕は侍従であり、料理長であり、時には大臣になる。 食事を作り、庭を整え、洗濯物を干して、 そして彼女のお供として通学する。 日常が変わることなく続いていく。 そう思って疑わなかった。 だけどある年の夏を境として、 僕も、彼女も、彼女の王国も、 何もかもがゆるやかに、変わっていこうとしていた。 これは、世界で一番ちっぽけな国の話。 ちっぽけな僕達のひと夏を巡る物語だ。
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